BCGワクチンの接種が新型コロナウイルスに効果があるのではないか?
オーストラリアの研究所が新型コロナウイルスに対するBCGワクチンの効果についての研究を始めたという報道もありました。
最近にわかに注目をあつめているBCGワクチンと新型コロナウイルスの関係について調べていきます。

BCGワクチンとは?
BCGワクチンとは結核の感染を予防するための生ワクチンのことです。
元々はウシ型結核菌の実験室培養を繰り返して作成された最近であるBCGを無毒化してBCGワクチンとしました。
そのBCGワクチンを人に接種してわざと結核菌に感染させることで、実際に結核に感染する前に免疫を獲得させることが目的です。
小学校の頃にハンコ注射をした記憶のある方も多いと思います。
日本では1951年に施行された「結核予防法」によって、法律による経皮接種が開始されました。
当初は幼児期・小学生・中学生の3回、ツベルクリン反応検査の皮内注射を行い、そこで陰性または疑陽性反応の出た子供にBCGワクチンの経皮接種(ハンコ注射)が行われていました。
2005年に結核予防法の改正によって接種時期は生後6ヶ月未満にツベルクリン反応検査なしで1回のみとなり、2014年以降は生後1年未満の接種ということになっています。
BCGワクチンと新型コロナウイルスの関係
そんなBCGワクチンですが、実際に新型コロナウイルスに効果があるのでしょうか?
まだ世界でも研究が始まったばかりで、はっきりとした研究結果は出ていません。
しかし世界の国々の感染者数・死者数などとBCGワクチンの接種の相関を見ると「もしかして」と思いたくなる結果になりました。
BCGワクチン接種と死亡率の相関
こちらの記事にある表をお借りして説明していきたいと思います。


少し前の数字にはなりますが、こちらの表は感染者数の上位国の100万人あたりの死亡率(死者数/感染者数)とBCGワクチン接種の実施状況です。
100万人あたりの死亡率が10以下の国は中国・トルコ・韓国・オーストラリア・日本・イラク・台湾の7カ国ですが、そのうちオーストラリアを除く6カ国が現在進行形でBCGワクチン接種を行なっています。
そして、過去にBCG接種を行なっていないアメリカやイタリア、昔は実施していたが今は行なっていないスペイン・フランス・イギリスなどの欧米の国では死亡率が高くなっていることがわかります。
そして、今は行なっていないノルウェーはその他の国と比べると死亡率が低くなっていますが、他の国より長い期間BCGの接種を行なっていたということです。
生菌数の多い日本株とソ連株
そして注目したいのは死亡率が低い国が接種しているBCGワクチンの亜株です。
BCGワクチンの亜株とはなにかというと
1921年にフランス・パスツール研究所で作られた大元のワクチン株が世界各国に配られ、それぞれの国で独自に培養されてきた細菌株のことです。
死亡率の低い日本株とソ連株は、大元の株から作られています。
死亡率が比較的高くなっているデンマーク株やタイス株は、大元の株の次の次の亜株を元に作られています。

上の表はワクチン中の生菌数とワクチンの結核に対して免疫を誘導する力を表したものです。
これを見ると、ワクチンが免疫を起こす能力はどの株もあまり変わりませんが、生菌数は日本株とソ連株が高いことがわかります。
生菌数が多いほどウイルスに対する免疫刺激能力が高くなる可能性があります。
2つの免疫「自然免疫」と「獲得免疫」
また、免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」があります。
「自然免疫」とは、ウイルスや細菌が体内に入ってくると真っ先に倒しに行く免疫反応です。
顆粒球・NK細胞・マイクロファージなどがそれにあたります。
顆粒球・・・ウイルスや細菌を食べて倒す
NK細胞・・・ウイルスや細菌に感染した細胞を壊す
マイクロファージ・・・NK細胞が壊した細胞を食べて掃除する
という役割を担っていて、人が生まれつき持っている免疫です。
一方「獲得免疫」とは、「自然免疫」が倒しきれなかったり見逃したウイルスや細菌(抗原)に対して反応する免疫です。
抗原の目印を認識し、その抗原に適した免疫反応のことを指し、T細胞やB細胞といったリンパ球が大量に増殖して抗原に対して強い殺傷能力を持ちます。
獲得免疫は人に生まれつき備わっているものではなく、抗原に出会うことで適した戦い方を学び、記憶します。
そのため、次に同じ抗原に出会った時にも同じように倒してくれます。
この獲得免疫の特性を生かして作られたものがワクチンです。
そして近年「自然免疫」には「獲得免疫」に敵の情報を伝えて、獲得免疫の働きを活性化させるという情報伝達役としての重要な役割があることが分かってきました。
BCGは自然免疫の強力な刺激物質
BCGは自然免疫を強力に刺激すると言われています。
自然免疫を刺激して活動が活発になれば、獲得免疫の働きも活発になります。
BCGワクチンの日本株とソ連株に共通する生菌数の多さは、免疫細胞の活性化にも大きな影響がある可能性があります。
全ては仮説
ここまでBCGワクチンが新型コロナウイルスに対して有効かもしれないという説について調べてきました。
数字だけを見れば確かに効果があるのではないか?と思ってしまいます。
しかしあくまでこれらは全て仮説であり、臨床的・学術的な根拠は今のところ何もありません。
最初に紹介した記事でも触れられていますが、一見相関がありそうに見えて実は別の理由によるものだった、又は全く関係なかったというのは度々起こります。
「BCGワクチンの接種をした=死亡率が低い」のではなく
「BCGワクチンを国民全員に接種できるほど豊かな国である=死亡率が低い」又は「BCGワクチンを国民全員に接種できるほど医療制度がしっかりしている国である=死亡率が低い」という可能性もあります。
また、BCGワクチンというのは乳幼児のための貴重な医療的資源であって、新型コロナウイルスの予防のために世界中の大人たちがこぞって接種できるだけの在庫も生産量もないということです。
効果が実証されたものでも簡単に接種できるものでもない以上、やはり現在研究中のワクチンや治療薬の完成を待つ、またはアビガンなどの新型コロナウイルスに効果があるとされている治療薬での対応をしていくしかありません。






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